司法書士になって会社員時代よりユルく生きるようになった

独立開業のリアル

1.会社員時代はいつもカリカリ

システムというものは一般の方が思っているよりもずっと頻繁にトラブルが発生します。大きな企業では複数のシステムが複雑に連携しあって動作しており、ちょっとしたイレギュラーなデータ等が大トラブルを引き起こすこともあります。

トラブルが発生すると即座に今行っている作業の手を止め、対応にあたります。その際、原因究明よりも対処を優先します。原因が分からないと対処できないのでは?と思われるかもしれませんが、完璧に原因が把握できなくともこれで復旧するかもという手段を片っ端から試します。兎にも角にも、顧客の業務の支障を取り除くことが最優先なのです。

なお、会社員時代に身に付けたこのトラブル時の行動原則は、今でも役に立っています。目の前の作業をいきなり全部ブン投げるとか、意外と難しいんですよ。トラブル対処中につい原因究明(それは今することじゃない!)に時間を割いてしまったり。

きちんとした原因究明はシステム障害が回復した後にじっくり行います。事後報告と再発防止策の提出を求めらます。提出して終わりではなく、上司の承認は必要になりますし、定期的に開催されるトラブル検証会議でやり玉に上がります。

原因究明の深堀りが足りない、再発防止策がこれでは不十分だ等、色々と難癖を付けられます。時には懲罰的と感じることもあります。(つまり、本当の目的が再発防止の手法を確立することではなく、弛んだ精神をシメることにあるということです。)

結局、ほぼ全てのトラブルの原因は究極的に突き詰めていくと「個人のスキル不足」か「人手不足(つまり予算不足)」に行き着きます。それを言っちゃあお終いなので、検証においてはそこに原因を求めてはいけないというルールを設けることもありますが、根本的な原因に目をつむっても無意味ですよね。

実際には損害が発生せずに済んだというケースも多いのですが、それで許されるわけもなく、たまたま運が良かっただけであって当然に対策は求められます。

トラブル検証会議の雰囲気は最悪でした。報告を受ける上司はあからさまに不機嫌な態度、出席者全員がピリピリしており、下手な発言をすると揚げ足を取られて吊るし上げられるので鬼のような緊張感でした。

トラブルは大小に関わらず撲滅すべき悪であり、みんながカリカリ怒りながら追及するのは当然だと思っていました

2.司法書士になって

私が勤めていた会社ほど規模の大きい司法書士事務所は存在しません。手続きやルールが大企業のようにしっかり整っているわけではありませんが、一概にそれが悪い(劣っている)ことだとは思いません。それは大会社だからこそ必要なものであって、少人数の組織には必要ないということもあります。

会社では、とにかく手続きに時間がかかります。冗談みたいな話ですが、押印欄が10個くらいある書類に承認印のスタンプラリーのため奔走していました。役職の低い人から順番に押さないといけない(押せる人から押してもらうというわけには行かない)のでとても時間がかかります。しかも偉い人ほど会議で離席していたり外出していたりと捕まりにくいのです。承認印をもらうためだけの係を置くこともありました。承認者の席を見張っていて、戻ってきたらすぐに「承認お願いします!」と言いに行くだけの仕事です。アホみたいな仕事ですが、承認がないと仕事が先に進まずスケジュールに影響するので、当時は大真面目でした。

2つ目の司法書士事務所では信託銀行と付き合いがあったのですが、会社員時代の自分を見ているようでした。ガチガチのルールに縛られて常にカリカリしており、ちょっとした不手際があると例えお客さんが怒っていなくても鬼の首を取ったように詰めてくる。

ですが、こちらを詰めてくる人も社内で上の人に詰められるんだろうなぁ、と考えると気の毒にも思えてくるでした。

3.独立開業して

今は一人事務所なので誰に叱られることもありません。逆に言うと叱ってくれる人がいないということです。独立開業前はそれが不安でした。

まだまだ知らないビジネスマナーとかあるとは思いますが、40歳を超えて、社会人経験をそれなりに積んで、それでも知らないマナーなんかどうでもいいやという考えに変わりました。

それを理由に怒り出すような人とは合わないし付き合わなければいい。「苦手な人とうまく付き合う方法」みたいな本ってたくさんありますが、そもそも苦手な人とは関わらなくていいのが独立稼業の素晴らしい所です。

もちろん締めるところは締める必要があります。不動産等の価値の高い財産に関与する以上、莫大な損害賠償責任を負うリスクもある仕事ですから。

でも、人間だからミスがあるのは当然ですし、フォローできるミスならそんなに深刻に考えなくてもいいんじゃない?というのが今のマインドです。トラブルは大小に関わらず怒りながら真剣に対処するもの、とカリカリしていた過去の自分からは解放されました。程よくユルく生きて行こうと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました