なぜ相続業務をメインにしたのか

独立開業のリアル

1.唯一需要の拡大が見込まれる分野

司法書士のメイン業務は不動産登記ですが、不動産業は斜陽産業と言われます。というか、人口減少の中でほとんどの産業が斜陽でしょう。

新築戸建てが未だにこんなに売れ続けているのが不思議でなりません。例えば一人っ子同士が結婚して家を買っても、いずれそれぞれの両親から不動産を相続し、1つの家庭に家が3つなんて事態は十分に考えられます。かつては資産の王様であった不動産も、近い将来、わざわざお金を出して買うものではなくなるかもしれません。

そんな中、唯一需要の拡大が見込まれるのが相続分野です。日本は現在言わずと知れた超高齢社会で2025年には年間死亡者数が約160万人に達すると見込まれています。

2.相続業務の内容は様々

一口に相続業務と言ってもその内容は様々です。大きく生前対策と死後事務に分けられますし、それぞれに司法書士が関与できる様々な業務があります。

例えば、生前対策だと遺言、任意後見、成年後見、死後事務委任契約などがありますし、死後事務だと相続登記、遺産整理、相続放棄などがあります。また、民事信託(家族信託)は生前から死後までカバーできる新たな手法です。

3.個人客

自分が個人事務所としてやっているため、お客様が個人だというのもやり易い点です。法人(会社)相手の仕事だと、人柄やスキルよりも値段が重視されたり、社内の手続きを段階的に踏む必要があったりと、どうしてもビジネスライクになってしまいがちです。

個人のお客さんだと案件が終わった後にお礼を言ってもらえることも多いですし、中にはお菓子とか果物とか送ってくれる方もいます。人の役に立っていると実感できますし、仕事に対するモチベーションが上がります

あと、下世話な話ですが金払いがいいお客さんが多い気がします。年齢層が高めの方が多いので、費用を踏み倒すような輩はほぼいません。また、相続財産はもともと自分のお金ではないのでそこから出費することに抵抗が少ないというのもあるのかもしれません。

初回相談無料と言ってもどうしても相談料を払いたいという方もいらっしゃいますし、お見積りを提示した際に「これだけでいいんですか、もっと払います」なんて仰る方も過去にいらっしゃいました(もちろん受け取っていません笑)。

4.上流に立てる

ホームページや広告、相談会等で自分が最初の窓口として案件を受任した場合、必要に応じて他士業や不動産屋に仕事を振ることができます。俗な言い方をすると恩を売れるのです。そうしておけばいつか逆にお仕事を紹介してくれるかもしれませんし、何か聞きたいことがある時に気軽に聞きやすくなったりもします。

ある案件で、遺言に基づく不動産の売却を不動産屋に依頼したところ、社長を連れて事務所まで挨拶に来ました。普段は不動産屋からお仕事を頂戴する立場にあることが多い司法書士ですが、仕事を出す側に立てれば立場が逆転します

5.最悪、取り下げも許される

決済の場合は、絶対にその日のうちに登記申請をしなければなりませんし、取り下げも許されません。故に名変飛ばしなんかは死を意味します。
※『司法書士試験における枠ズレの恐怖』参照

そのような仕事は個人事務所ではリスクが高いです。体調不良になることもありますし、電車が止まったりして身動きが取れなくなっても代わりに動いてくれる人はいません。ミスをチェックしてくれる人もいません。

また、停電や故障によりパソコンが使えなくなるリスクもあります。本来ならばバックアップ体制を整えておくべきなのでしょうが、コスト面を考えると個人事務所ではなかなかそこまでのリスク対策はとれません。

相続は必ずこの日に登記申請しなければならないという案件はほぼないですし、何かミスがあったとしても最悪取り下げて出し直しても問題になることはあまりありません。もちろん案件によっては期限がある場合もありますし、そうでなくても可能な限り迅速に処理するのがお客様のためです。それは承知しているのですが、決済みたいに最悪損害賠償を請求されるという恐怖を感じずに仕事ができるのは精神衛生上とても良いですね。

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