1.やっぱりメインは「登記」
司法書士の最も伝統的な業務です。最近はAIに取って代わられるとか、これからは登記だけじゃダメだとか言われますが、いざ司法書士業界に出てみるとまだまだ登記がメイン業務だなと強く実感します。登記簿の書き換えを申請するだけの業務でしょ?と一般の方には理解されづらいのですが、大変奥深く責任の重い業務です。
不動産登記(売買・贈与・相続等による所有権移転登記、抵当権設定・抹消登記 etc.)と商業登記(会社・法人の設立登記、役員・目的等の変更登記、解散・清算結了登記 etc.)の2つがメインですが、他にも動産譲渡登記、債権譲渡登記、工場財団の登記、船舶登記等いろいろあります。
なお、弁護士も登記業務を行うことができますが、実際にやる人はまずいません。(そもそも司法試験では登記法は出題されません。)弁護士業務の中で登記の必要が生じた際は司法書士に依頼してくれる方がほとんどです。ニッチな分野だからこそ弁護士にも負けない司法書士の強みとなっています。
2.登記以外にもある「相続業務」
相続が発生した際、遺産に不動産があればもちろん登記が必要となりますが、他にも預貯金の解約、有価証券の売却等も行うことができます。
相続人が自分でやればいいじゃん、と思われるかもしれませんが、お年寄りで動くのが難しかったり、相続人が多数いる場合等に司法書士が代理して行うことがあります。
特に戸籍(あらゆる相続手続きで必要となります)の収集は一般の方には困難であるため、司法書士が収集を代行することが多いです。古い戸籍は慣れていないとまず読めませんからね。ちなみに戸籍の読み方は試験には出ませんが、合格後の新人研修で詳しく教えてもらえます。
3.もっと作成して欲しい「遺言」
自筆証書遺言や公正証書遺言の作成支援を行います。
自筆はともかく、公正証書は公証人が作成するんだから司法書士が出る幕ないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、公証役場は予約が取りづらかったり、公証人によっては言われた通りに公正証書にするだけで「もっとこうしたほうがいいんじゃないの?」的なアドバイスをしてくれなかったりするので、お客さんにとって司法書士が間に入るメリットは充分あります。
遺言を残される方はまだまだ少ないため、司法書士をやっていると亡くなった後に相談されて「あー、遺言さえあればなぁ…」と思うことがままあります。啓蒙の必要性を感じる分野ですね。
4.司法書士がいち早く力を入れた「後見業務」
司法書士が親族や弁護士・社会福祉士等を抑えて最も多く成年後見人に選任されています。(執筆時点)登記業務等を行わず後見業務ばかり数十件受任している司法書士もいます。
他人の人生に責任を持つ仕事なので法律の知識だけでこなせるものではなく、財産の管理だけしていればよいというものでもありません。私が後見に付いている方が買い物に出かけたまま帰って来れなくなってしまい、警察に捜索願いを出して深夜に無事発見され迎えに行ったという経験があります。その割に報酬は(略)
成年後見は既に意思能力を失ってしまった後に利用する制度ですが、意思能力を失う前であれば任意後見契約を結んで好きな人を後見人に選んでおくことができます。司法書士としては、遺言同様こちらの必要性を訴えて行きたいところです。
5.ミニ弁護士みたいなもんでしょ?「訴訟業務」
司法書士に対して「ミニ弁護士」みたいなイメージを持っていらっしゃる方もいるかと思いますが、基本的に弁護士以外が紛争に介入することは違法(非弁)です。例外として、簡易裁判所における訴額140万円以下の事件については、司法書士も訴訟代理人となることができます。
ただし、司法書士試験合格後に特別研修(トッケン)を受講し、簡裁訴訟代理権等能力認定考査(こっちを略せよ、と思う)という試験に別途合格する必要があります。司法書士試験に比べたらずっと合格率の高い試験のはずなのですが、何故か何年経っても受からない人が一定数います。
過払い金バブルが終息した今となっては、この業務をメインとしている司法書士は少数派だと思います。一般に訴額が小さいと報酬も少ないので儲からな(略)
なお、訴状等の裁判所に提出する書類を作成するだけなら簡裁代理権を持っていなくても全ての司法書士が行うことができます。提出先も簡易裁判所に限られません。家庭裁判所への相続放棄申述書の作成なんかもこの業務に含まれますね。
6.その他
今回は詳細は割愛しますが、他にも供託や破産申し立て、徐々に注目され始めている家族信託(民事信託)等もあります。マニアック資格と思いきや、意外とできることは多いのです。
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