1.お客様基準ではなく自分基準で決める
司法書士の報酬については、昔は報酬規定というのが定められていてどの事務所でも同じだったのですが、今は自由化されています。
今でも旧報酬規定はある程度参考になりますが、中には今の相場に照らして高すぎる規定や安すぎる規定もあります。私の場合、独立前に勤めていた事務所の報酬基準や、近隣の事務所の報酬基準を参考にしましたが、最終的には「この仕事は最低これくらいいただかないとやる気にならない」という額に設定しています。
つまりは、自分基準で報酬額を決めています。というのも、お客様基準で決めることは不可能だからです。お客様にとっての「適正な価格」はお客様ごとに異なるので一律には決められません。
そもそも司法書士に限らず、士業の仕事は自分でもやろうと思えばできます。弁護士に依頼せず本人訴訟をする人はいくらでもいますし、税理士に依頼せず自分で確定申告をする人もたくさんいます。要は、自分でやる時間や手間をお金で買うか否か、ということです。
例えば、ある仕事の報酬額が10万円だったとして、時間に余裕があり、なおかつ自分で色々と調べてできる能力のある人にとっては、10万円も払って他人に頼むのは高すぎると思うかもしれません。
一方で、忙しいとか体が不自由だとかの理由で自分でやることが困難な人にとっては、安いと感じるかもしれません。場合によっては100万円払ってでもお願いしたいという人もいるでしょう。
このように、お客様ごとに事情(時間、能力、経済力 etc.)が異なるため、どのお客様にとっても適正な報酬額を客観的に決定することは不可能なのです。
2.やや低めの価格設定、ただし値引きは一切しない
当事務所では「最低これくらい」というのがポイントで、相場よりやや低めになっているのですが、その代わり値引きには一切応じないスタンスです。価格交渉が面倒くさいので、もとから低めに設定し、値引きを要求された瞬間にお断りするようにしています。
あと単純に貧乏性なので高い報酬設定にできないというのもあります。さすがに法テラスより安いことに気付いた時は値上げしましたが…。
価格競争に走ると業界全体が沈下するし、司法書士の価値を維持するためにも報酬はきちんと取るべきだ、という意見はごもっともですし、私もそう思います。
何が何でも近隣の事務所より1円でも安く!と家電量販店みたいなことをしているわけではなく、あくまで上述の「最低これくらいいただかないとやる気にならない」を軸に価格設定をしています。
なお、途中で見直すことももちろんあります。むしろ常に微調整しています。勤務時代にやったことのない仕事を実際にやってみたら思ったより大変だった、という経験をした後では当然「最低これくらいいただかないと」の額が変わってきます。
3.不当誘致、キックバックは一切しない
当然のことですが、キックバックや不当誘致は一切行っていません。当然のことと言いましたが、やっている事務所、結構あると思います。
お得意様を値引きするとか、紹介元に紹介料を支払うとか、一般的なビジネスにおいて当然に行われていることも、司法書士倫理では禁止されています。
司法書士といえど単なる個人事業主に過ぎないわけで、こんな現実が見えていない倫理規定をバカ正直に守っていて商売ができるかよ、という気持ちは、本音を言うとよく分かります。報酬を自由化し、競争を推奨しておきながら厳しい規制は残っている、という現状がジレンマを生んでいます。
ですが、単純に「禁止されている以上は行わない」というのが私のスタンスです。納得のいかないルールには従わない、というのでは法律を扱う専門家として失格ですし、ルールがおかしいと思うのならそれを変える運動をするのが筋だと思うからです。まあ、その運動をする程の情熱はないので大人しく従っているだけなんですが…。
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